2001/6/2 早戸川の尺イワナ

プレッシャーの高い丹沢の渓流で、いかにしたら釣れるのだろうか。いつものTaki-minnowで瀬を狙えば、ヘチや岩に付いている魚を仕留めることができる。しかし、そのような場所は餌釣りやフライアングラーも狙う場所であり、釣り切られてしまう可能性が高い。しかし急流に沈む底岩の陰や白泡の立っている場所などは、手つかずの魚たちが集まっているような気がしてならないのである。

そこで昨年から底狙いの試作ミノーを試しているのだが、気に入った一品がどうしても作れない。今回もダイブ型を持って行ったが急流での動きに難がある。時々流れに負けて不自然な動きをしてしまう。「イレギュラーな動きで魚を誘う」と書かれた市販ミノーのパッケージを見かけるが、それは誤解をまねきやすい。渓流での基本はあくまでもスタンダードな泳ぎである。弱った小魚を演出するのはアングラーの腕にかかっている。納得がいくまで新作ミノーの完成も先になりそうだ。

国際ます釣り場よりも上流の滝の上から釣り始める。水量は豊富で気温も高い。いつ来ても良い渓相である。魚さえいれば日本一の渓流なのに、今日も釣れない。年配のテンカラ師に出会った。肩からビクを下げ、イデタチからしても相当な釣り師と思われる。その人が「魚見ました?」と聞いてきた。釣り場の挨拶で、こんなに寂しい言葉はない。

時計は9時を回っている。林道沿いを川を見ながら歩くが、釣り人が多くて入る気がしない。三日月橋上流の滝の上から再び開始する。川原に降りるとスルッと蛇が隠れた。

ミノーイングを始めた頃、ここで大物を逃したことがある。市販のフローティングミノーをリトリーブしていると、サッと黒い影が追ってきた。すごくでかい!アクションを入れることなど知らなかったので、大きな魚影を確認しつつもリーリング以外の成す術はなく、息をころしてリールを巻いた。やがて魚は引き返し、空しくミノーだけが足元に帰ってきたのである。くやしくて何度も同じ場所にキャストしたが、二度と姿を現さなかった。

あの時と同じ場所に立っている。「あの頃とは違うぜ」と心の中でつぶやき、キャストすると木に引っかかってしまった。仕方なく水に入ってミノーを回収しに行く。私がウェーデングしたために、魚は散ってしまったはずだった。ところが、すぐ上流にキャストして驚いた。リールが巻けない!

ドラグが断続的に鳴っている。たっぷりとした白い腹がのた打ち回っているのが見える。「あの時のやつだ」思わず叫びそうになった。巻けないリールを両手で押さえて、そのまま後ずさりした。岸に上がって勢い良くはねているそいつは36.5センチ、尺オーバーのイワナだった。