2001/07/04早戸川での不思議体験


有名なバスプロが小さな空缶めがけてルアーをキャストするシーンを見たことがあるだろうか。もし渓流であのくらいの命中率があれば、釣果は跳ね上がるに違いない。私などは距離感がつかめずに岩にぶち当て、あさっての方向に飛んでしまい、チャンスを逃すこともしばしばである。釣果を伸ばすためには腕の差を道具でカバーするしかない。そこで今回も極細フックを取り付けてフィールドへ出てみた。なお、今回から、ミノーのヘッド部には蛍光色を吹き付けて視認性を高めている。

梅雨だというのに連日暑い。早朝6時、早戸川の上流から生ぬるい風が降りてくる。以前に尺イワナを釣り上げた上流のポイントに即入りたかったが、日中暑くなることを考えると、下流から先に攻めた方がよさそうだ。いつものように国際マス釣り場上流から入渓する。

視認性を高めたヘッド色 フックはヤマメ針で自作の極細


渇水ぎみの川幅は5メートルほどである。今日はどのような場所に魚が付いているのかを丹念に探りつつ進む。暗がりにキャストしてもカラフルなヘッドが目立ち、ミノーがどこを通過しているのかがすぐにわかった。

膝の高さにも満たない浅瀬でヤマメがアタックしてきた。そっと岸に寄せると22センチ。鋭い針先が確実にフッキングしている。毎夜のハンダ付けなど、細かい作業も報われるというものだ。しばらく同じような瀬が続き、何度もキャスティングを繰り返す。その回数がそのまま釣果につながるのだが、実は集中力はいつまでも続かない。油断しているすきに大きな魚が追ってきていた。あわててミノーをストップさせたが後の祭り。魚の口がミノーに触れることもなく逃げられてしまった。実は私の集中力は5分ともたず、知らずに歌などを口ずさんでいることがある。そう言う時に限って大物が追ってきているのである。

取り逃がした場所から1キロほど進むと渓相も険しくなってくる。魚が好みそうな緑色をした深場がいくつも点在している。岩の狭い隙間にポトリと落とすと小さなイワナが食ってきた。急な流れのすぐ脇の本当に狭く暗いポイントである。こんな厳しい場所でじっと餌を待つイワナがふと悲しい存在に思えてきた。イワナ達をもて遊ぶようなことをして良いのだろうか。などと考えていたら逆に「水の民」にもて遊ばれることになってしまった。またしても大物を取り逃がしたようである。


急な流れの白泡の脇をアップストリームに投げてから、実はいいかげんにリールを巻いていた。流れが速すぎてTaki-minnowがきちんとスイムしているとは思えなかったのである。ロッドを寝かせてリトリーブしていたので、ミノーが足元に帰ってきたときは竿先からミノーのアイまで30センチほどしか離れていなかったと思う。「無駄なキャスティングをしてしまった」とばかりにロッドを持ち上げた瞬間、バキッ!黒く重い固まりがミノーを弾いて急流に消えて行った。信じてほしい。私は決してネタ切れになり、物語を書き始めたわけではない。

あれはいったい何者だったのか、目の前で起きた現実なのによく覚えていない。確かドッヂボールくらいの丸く黒いものだった。イワナにしては形が変だ。石が流れてきたのか?それにしてもすごいスピードだった。
夢をみていたのか。目撃者は私と変形したフックをぶら下げたTaki-minnowだけなのである。

何物かにより変形したフック
写真よりももっと薄暗い場所だった