2001/10/06 秋の布川でヤマメを釣る


布川釣行の途中、中津藤沢合流点を眺める。林道の脇には他県ナンバーが数台止まっている。近県の渓流は禁漁期間に入ってしまっているので、この時期になると未練たっぷりのアングラーたちが他県からも続々とやってくる。しかし東丹沢も今月14日で禁漁期間に入ってしまうのだ。

ちょっとロッドを振ると水中でミノーが何かに掛かった。「落ち葉かな」と思ったら小さなイワナである。水面をもがきながら、口に掛かった異物を必死に振り払おうとしている。フックに掛かるなんて初めての経験なのだろう、リリースすると逆さになったり石にぶつかったりしながら慌てて逃げて行った。

少し上流に行くとアングラーがルアーを投げている。「釣れますか?」と聞かれたので「シシャモくらいのが1匹ね」と答える。彼のロッドの先にはミノーがついている。私がtakiであることを明かすと「あっ、知ってます。先日唐沢川に行ったんですよね?」「36.5センチはどの辺で上げたんですか?」「taki-minnowってどこに行ったら買えるんですか?」

サラリーマンアングラー&素人ビルダーの私だが、そんな風に言われるとすっかり気を良くしてしまい。持っていたtaki-minnowをプレゼントした。ミノーをながめながら「そうそうダブルフックって書いてあった」と喜ばれてしまった。アイをペンチで曲げたり岩に激突させたりした使い古しのミノーだったので、きちんとスイムしているか気になる。来シーズンからはバックに冷たいビールを入れておこう。気のいいアングラーに出会ったらその場で一杯やるつもりだ。もちろん女性ならば無条件でOKに決まっている。


布川最下流の石垣ポイントでしばらくキャストするがピクリとも来ない。雰囲気は申し分ないのだが魚影がない。釣りきられてしまったに違いない。少し上流で60歳くらいの餌釣り師に声をかけられた。「どうだい?」「魚の姿が見えません、もう残っていないのでしょう」私が答えると「そうかな、さっきあそこで10尾ほど上げた」と石垣ポイントを指差すのである。「10尾釣れたんだから、まだたまってるよ」そんなはずはない。私は丹念に底石ひとつひとつに探りをいれたのだ。その話を聞いていたもう一人の若い餌釣り師が「先にやらせてもらいます」と石垣に向かってすっ飛んで行った。

しばらく年配の釣り師と話をする。なんと彼は定年を向かえる3年前までは、私の母校(小学校)で先生をしていたそうだ。禁漁期間になっても魚が忘れられず、時々様子を見に来ている。「12月頃になるとね、この辺一帯に魚が群れてるんだよ」禁漁期間は充分承知しているのだが、それを見るといてもたってもいられずに竿を振るそうである。そして「かわいそう、かわいそう」と言いながら釣ってはリリースを繰り返すそうだ。「師走」なのに我が母校の先生は、掟破りの釣りをしていたのである。そのような先生のいる小学校を卒業すると私のように釣りキチになってしまうので、とても好ましい。結局、石垣で粘っていた釣り人の竿も曲がることはなかった。

もう少し上流の堰堤下で20センチほどのヤマメが数尾釣れた。実は前回も含めて、しっかりと針に掛からず取り逃がすケースが多くなってきている。ヤマメ針のダブルフックも百発百中ではなかった。ロッドがウルトラライトだと良いのだろうが、ミノーは硬めのロッドで操作したい。「腕を磨くしかないか」道具に頼ってばかりはいられない。広い川原の遥か下流、石垣のポイントで先生が白いものを掲げて手を振っていた。