2002/04/23 唐沢川のヤマメ


中津川のバックウォーター周辺に車をとめた。朝9時だというのに風は冷たく肌寒い。思いっきり深呼吸をして、心地よい若葉の香りをかいだ。しかし、ウェーダーを履いている最中に、何気なく傍らを見て言葉を失った。汚物がたくさん落ちているのだ。消臭剤がまぶしてあるところを見ると、おそらくはキャンプ場以外の場所でキャンプをし、簡易トイレの中身を捨てていったのだろう。大変残念なことである。かといってそれを始末する気にはなれず、そのまま川へ向かってしまった。釣り場までの小道にもゴミが散乱している。大ヤマメでも出ない限り「また来たい」とは思えないだろう。

宮ヶ瀬湖への流れ込みは広い入り江になっており、大きな魚が悠々と泳いでいる。しかしTaki-minnowの飛距離は限られている。射程距離内にもトラウトはいるが、彼らの顔には「食う気はない」と書いてある。泥の上には落ち葉が何重にも重なり、足を踏み入れるとズブズブともぐりこんだ。しーんと静まり、時がとまったような止水の釣りは苦手である。埋もれた足を引き抜くと、泥だらけのシューズのまま上流へ歩き出した。

中津川の下流は幅が広く、そして深い。数々の大岩の影からは、今にもヤマメが飛び出してきそうな雰囲気である。しかし堰堤まで釣り上がってもノーフィッシュ。例の汚物は見ないようにして一旦車に戻り、唐沢川付近に移動した。

唐沢川は釣れない川である。山ヒルも多く、知らないうちに血を吸われていることがある。やつらは動物の血をたらふく吸った後、コロコロに太り地面に落ちる。どんなに注意していてもいつのまにか肌についている。ソックスの上からでも食いついてくる。しかしこの川のよいところは本格的な山釣りの雰囲気を味わえる点である。山菜や木の実も豊富で動物の姿を見かけることもしばしばだ。汚いものは見なくて済む。

大きな岩の影や流れの緩やかな筋にミノーをキャストして丁寧に探って行く。相変わらず魚影はない。それでもミノーが岩の間に吸い込まれ、クリアな水の中をクネクネと泳ぐ姿を見ていると期待感でいっぱいになる。突然食いつく魚の姿を想像し、ワクワクしてくる。

ひとつめの滝の手前に深場がある。ものすごいスピードで魚が現れ、ミノーをひったくって行った。不連続な衝撃が水中から伝わってくる。上げてみると20センチの元気なヤマメであった。本日、バックウォーターから釣り上がってみて改めて感じたが、私には小渓流が一番楽しい。
帰り道、最初に駐車した場所をチラッと見ると、汚物がなくなっていた。「汚い物はみたくない」精神作用が働いたのか、確かに私には何も見えなかった。