2002年07月04日 布川の皮肉


川原を釣り歩く時、無意識に歌を口ずさんでいることがある。ジャンルは特にない。時には「イカシタ歌」であったり、とんでもなく恥ずかしいものであったりする。歌声がしだいに大きくなり、後ろを振り返ると釣り師が笑っていたなどという経験もある。僕にとっては狭いカラオケボックスで機械頼りに歌うより、渓流で唸った方がずっと気分よく上手に歌えるのだ。

早朝から布川でロッドを振っている。時折ベビーヤマメがアタックしてくるだけで良型は顔を見せない。唐沢林道合流地点の水量は渇水ぎみ。梅雨だというのに、山には雨が少ないらしい。このポイントは大雨が降ると、上流にある養魚場から魚が流れてくる。それがない以上、満足な釣果は望めないだろう。幾度となくキャストを続けるうちに口ずさんでいた歌は「イマジン」であった。
♪ 想像してごらん、何も持たない姿を
君にそれができるだろうか ♪
欲張ったり飢えたりすることなく、
人はみな兄弟なんだ ♪
♪ Imagine all the people ・・・・ ♪

そうか、目をむきだして意地になってキャストしてはいけないのである。「自然の中でロッドを振れるだけで満足だ」、そう思わなければならない。それがアングラーの真髄ではなかったか。

♪ 想像してごらん、何も釣れない姿を
君にそれができるだろうか ♪
 
・・・・・できないのである。
人類平等と平和の歌をこんな風に替えてしまってはバチがあたる。振り返ると大切なデジカメが水没していた。

最後の淵でやっと釣れた。サイドストリームに投げたtaki-minnowを「食う」というよりも「追い払う」ようにヤマメが飛び出してきた。ゴンゴンゴンと勢いよく首を振る様子がロッドの先から伝わってくる。上記の事実により写真はないが、22センチのヤマメであった。

MTBをけって山を走りまわっていた頃から、様々なトラブルを克服してきた。しかし、ハイテク機器となると話は別。自然の中で壊れるのは一瞬。その後は手も足もでない。

帰り道、すべての欲を捨てきれない僕は、水のしたたるデジカメを手にトボトボと歩いていた。