2004/06/05  布川銀座でイワナを釣る


もしも僕が女だったら渓流師の嫁などにはならないかも知れない。週末にもなると山へ出かけ、帰ってきたと思ったら釣り道具を作ったり修繕したり、ちっとも相手にしてもらえないのである。しかし今日は一緒に釣りをしている熟年夫婦に出会った。ご主人は黒、奥様は赤のフィッシングジャケットを着ている。仲良く手を取って川を渡る姿は見ていて微笑ましい。


今日はさわやかなアウトドア日和。これから向かう布川は当然混んでいるだろうと予測していた。しかし7時というのに誰もいない。僕が一番乗りである。当然期待に胸が膨らむ。「誰も来ないうちに、主要ポイントは探っておこう」

ところがどの淵にも魚影はまったく見えない。何度キャストしても気配さえない。そのうち林道から車のドアを閉じる音が聞こえてきた「誰かくる」
しかたがないので大好きなポイントだが、これ以上粘らずに滝へ向かって釣り上がることにした。


渇水ぎみだが、瀬にはところどころに深場がある。そのような場所に魚が隠れている。首筋がジリジリと焼けるように暑い。何度もキャストを繰り返す。日差しを大きな枝が遮っているポイントがあった。そのど真ん中に着水させると同時にガツンときた。でも浅瀬なので魚とのやりとりに迫力がない。合わせと同時に魚が宙を舞い、そのまま足元に落ちた。先週まで大物との格闘を楽しんできた僕にとって味気ない取り込みであったが、それはどうやら贅沢な話であったようだ。

2重滝のところまで釣り上がり、戻る途中に何人ものアングラーに出会った。フライマンをはじめ餌釣り師も「ちっとも当たりがない」とのこと、皆ボーズだった。かろうじて最初に入ることができた僕はラッキーだったのである。だから「迫力のないやりとりだ」などと言ってはいけない。「そこでイワナが出ましたよ」と指をさすと、「そうですかぁ・・」とフライマンはうらやましそうに言うのだった。

写真中央の暗い部分からイワナが出た

「こんにちは」緑の橋付近で、先に話したご夫婦が話しかけてきた。「釣れましたか?」「ええ、1匹だけ」僕はにっこり笑って答えた。「そう?それはよかったです」やさしそうなご主人である。イワナよ、悪いことは言わない、あの人たちに釣られてやりなさい。