2004/09/11 布川にルアーマン現る

ミノーが水面に落ちると同時にゴンと来た。勢いよく流れ落ちる滝つぼの片すみ。暗く窪んだ岩の陰には大きなイワナが隠れている。再度キャストすると狂ったように追ってきた。しかしその土俵は狭く、ミノーは浅瀬をなめて、やがて岸にたどり着く。驚いたことにヤツはそれでも追ってくる。水面から背びれを見せて、まるで勢い余って波打ち際に突っ込むジョーズのようである。このまま釣りを続けていれば、いつか「陸上でイワナを釣り上げた」などという日が来るかも知れない。



今年の布川は初心者向けと言えるだろう。魚はほとんどがイワナで、どんなルアーにも「どん欲」に反応する。当然すぐに釣られてしまうのだが、上流の管理釣り場から流されてくるものがその数を補充している。また、比較的歩きやすく安全で、女性でも十分楽しめるのがこの川のいいところだ。

最下流から入渓し、しばらく行くとルアーマンがミノーを投げていた。丁寧に会釈してきたので僕も軽く返す。今考えれば彼とは過去2回会っている。このホームページを知っているというので名刺とtaki-minnowを2個渡した。僕が勝手に渡したもので「ください」と言われたわけではない。しかしメールくらいはいただけると嬉しいのだが・・・。現在は精力的にミノーを製作していないので、親しい方にもプレゼントできない。来年こそは製作数を増やし、全国各地で活躍させたいと願っている。

右の岩陰からジョーズのように追ってきた

今シーズンは鮎針を使ってフックを作ったり、極細ライン、極小ミノーで攻めてみたりと様々なアイテムを考えた。しかし夏の終わりのこの時期は細かいことは考えなくてよい。相手も真っ向勝負を挑んでくる。滝が2段になっているその下、たっぷりと水を溜めたプールに思い切りキャストする。ゆっくりミノーを泳がせるとガツンとくる。4lbの太いラインは切られる心配もなく根ずれにも強い。水中を割って姿を現したのは良型のイワナ、フロントとテールの両フックをくわえていた。


昼を過ぎ、山深い上流部でキャストしていると前方の急な崖が「パチパチ」と鳴る。何かが小枝を踏む音だ。あきらかに生き物の気配。「熊か」・・。そのうちに「ひぇ〜」という声とともに若者が降りてきた。手にはルアーロッドを握り締めている。「こんな急な崖、よく降りてこれたね」と僕。「えぇ、後からもう一人来ます」と根性の据わった顔で言った。「こんなところ降りてこなくても、すぐそこに道があるんだよ」「え!そうなんですか?」

僕はその道を登って林道に出る。ここから入渓地点まで1時間ほど歩かなくてはならない。しかし人と出会えるのが徒歩の良いところだ。数時間前、キャンプ場跡の川原で大イワナを釣り上げていた若者。林道の石垣に生えたコケを削ぎとっている年配の夫婦「さつきに使う」と言う。毎年毎週のように丹沢に通う僕。きっとこれからもずっとそうなんだと思う。