2005/05/14  小渓流にイワナが跳ねる 谷太郎川

谷太郎林道の突き当たりに駐車スペースがある。そこから10メートルほど歩いたところが入渓地点だ。上流にある大岩の下のプールには、物陰がいくつもあり、見るからに釣れそうな雰囲気を作り出している。岩肌すれすれにキャストしてみると、小魚がミノーをたたいてきた。可愛い魚信に心は踊り、「今日は大漁かも知れない」という大きな期待で胸がいっぱいになった。


そのプールから上流は、小さな落ち込みと浅瀬の連続だ。落ち込みの深さは膝くらい、瀬は足首くらいの渓流となる。落ち込みめがけて丁寧なキャストを繰り返してゆく。18センチクラスの魚がキラメキに誘われて飛び出してきた。しかし着水直後の体勢が未だ整っていない我がミノーは、腹を見せながら流されてくる。当然、そのままラインはたるんでゆく。

そこで明暗を分けるのはリールの存在だ。もしもリトリーブを着水と同時に開始できたなら、ミノーはすっくと立ち上がり、魅惑的なアクションで魚を誘ったことだろう。ところがこんなときに限ってベール付近のトラブルだ。これ以上巻けないので、僕は呆然と見ているしかなかった。ミノーはまるで中年オヤジのような白い腹を見せながら、ふわりふわりと流されてくる。驚いたことに、それでも魚は突付いてくる。もしも今以上に鋭いフックがあるならば、チャラ瀬でも「ほっとけメソッド」で釣れるのかも知れない。

魚がミノーをくわえても、突然のライントラブルが発生すれば、それ以後の工程は水の泡となる。同じことが今日は2度もあった。2度ある失敗、3度目があってたまるものか。


その先50メートルほど上流に、庭園かと思えるほど綺麗で風格のある滝を見つけた。その下にはたっぷりとした水が溜まっている。滝の落ち込みにサミングをきかせて着水させる。ラインを少し煽って体勢を整え、人が歩くくらいの早さで巻いてくる。
突然ググッ!と重くなった。なんとも言えない快感に鼻の穴が広がる。僕は必死にリールを巻いてゆく。魚の暴れる水しぶきが少しずつ近づいてくる。赤く錆びた腹がヌタヌタと暴れる様子が見えてきた。このような場面でフッと軽くなった経験が何度もあるので怖くてしかたがない。足元に引き寄せたときにはものすごい安堵感、まさに3度目の正直を確信した瞬間だった。