バルサ製taki-minnowは藻やコケの類に弱い。
真夏の底石をなめて藻が絡むと、途端に泳ぎが悪くなる。
蜘蛛の糸も同様だ。
タックルの掃除を何度もしながら、根気よく、時間をかけて釣り上がる。
ガイドのYellow氏は僕に釣らせるために努力してくれている。
普段、大切にしているポイントをすべて僕のために空けてくれた。
しかし僕はベタベタになったミノーを空しく回収するばかりで、未だ魚の気配を感じずにいた。
「今日は食いが悪いです、いつもはもっと飛びついてくるんだけど・・・」とさっぱり釣れない僕に対して、彼の言葉も慰めモード。
なんとかチビ1尾でも釣って「ガイドさんのおかげです」と言いたい。
「takiさん、次は上流と下流のどちらに行きたいですか?」昼飯をほおばりながら彼が聞いてきた。
「上流にしましょう」と僕は答えた。
運命の分かれ道とは本当にある。
もしもこの時下流を選んでいたら、今回の釣果はどうなっていたかわからない。
M川源流部には湧き水が集まって、大きな水溜りができていた。
そこから下流に向かって少しずつ勢いを増しながら流れて行く。
川幅の狭い小さなプールにミノーを投げ入れる。
しばらく泳がせるとスッと黒い影が寄ってきた。
「アシカだ」と思った。
この小さな川に何の動物だ?
やがてその水中動物はミノーの影と重なった。
チョンチョンとロッドを煽るとまだ軽い。
そのアクションが功を奏したのか次には「カツン」と重くなった。
普段、僕が相手にしているヤマメなどは、この時点で全速力で逃げるのである。
しかしコイツはまったく動じない。
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