2005/07/30  ウブなイワナに助けられる (丹沢 布川)
むっとする暑さ、ものすごく不快だ。

塩水橋に車を止め、塩水川沿いを足早に歩く。
三脚をかかえ、大きなリュックを背負った年配の男性と会った。
「こんにちは」と声をかけると
「いや、どうも」と玉のような汗をかき、辛そうな顔で返事をくれた。
「暑くてまいっちゃいますね、写真ですか?」
「堂平のね、ブナ林を撮ろうと思ってね」
年に一度の写真展のためにベストショットを撮りにきたと言う。
僕にとっても久しぶりの釣行、ヤマメの写真、そのベストショットを想像しつつ崖を下った。



川に下りると風が爽やかだ。
ここで一日、ビールを飲みながら過ごしたら、どんなにか気持ちがいいだろう。
しかし釣りという視点から見ると、この流れはいただけない。
水量が多く、どのポイントにも強い水流で白泡が立っている。
流れの緩やかな場所や溜りを見つけてはキャストするのだが、反応はない。
しばらく釣り上がったが、面白くないので中津川まで降りてきてしまった。

前回ヤマメが釣れた場所で、ルアーアングラーがキャストしていた。
なかなかのテクニックである。
誰だろう?

塩水川は増水していた

時間はまだ9時、中津川をそのアングラーにゆずり、僕は布川を攻めることにした。
予想通り、水着の奥様たちが水浴びをしている。
男性陣は肉を焼き、酒を飲んで騒いでいる。
彼らに罪はないが、河原に立ち込める肉の匂いはいただけない。
長袖、長ズボンの僕はせっせとキャストを繰り返し、スタスタと上流へ向かって立ち去った。

大洞キャンプ場跡まで来たが、さっぱり釣れない。
堰堤下で、アタックしてきた良型がいた。
何度もミノーに絡んでくるのだが、一度も触れることはなかった。
僕の経験だと、縄張り主張が目的の渓魚は、相手と接触することは絶対にない。
 


キャンプ場前でやっと釣れた!
対岸の緩いプール、そこに落ちたミノーを追いかけて僕の目前で食ってくれた。
とっても元気な中学生サイズ。
たった1尾だけど、ものすごい感謝である。

さて、同じ場所で再度キャスト!
また魚が追ってくる。
何回キャストしても、何度も何度も追ってくる。
「ん?」同じ魚だ。
なんだか、いけない事をしているような気がしてきた。

「君、こんなことしてちゃダメだよ・・・」
川を離れる僕の背中、その哀愁はネオン街を立ち去る中年男性のようであった。