2005/09/10  本谷川、苦労して釣った豆イワナ
夏の終わりの本谷川、
塩水川との出会いを過ぎて最初の堰堤から入渓する。
河原には大きな石が重なり合っており、その中をうねる様に水が流れて行く。
見上げると断崖絶壁、山肌のいたるところに岩が顔を出している。
どの岩も、いつ落ちてくるとも限らぬほど中途半端な状態だ。
足元には落石が散乱している。

岩が落ちてくるかも知れないというスリル。
その一方で、この素敵な渓相の中から良型を引き出せるかも知れないというトキメキ。
渓流釣りはスリルとサスペンスにあふれた筋書きのないドラマなのである。

しかし、本日のドラマは何時間たっても花が見えてこない。
急流の脇の緩やかな流れ、岩の陰、そして白泡の下などを丹念に探るのだがコツリともこない。
急流の多い下流はあきらめ、フラットな流れの上流に移動した。


途中で餌釣り師と出会う。
「釣れましたか?」と聞いてくるので、
「さっぱりです」と答える。
「私も今日は少ないよ」そう言いながらもヤマメを数匹釣った帰りらしい。
彼は別れ際に振り返り、「この辺には間違いなく、このくらいのがいますよ」と20センチほど手を広げて言った。
「100パーセントいますよ」
河原にも色づいた落ち葉が目立つようになってきた。
それなのに今日は暑い。
ヘルメットほどの石が流れの中に点在している。
その陰にミノーを流しながら釣り上がると、やがてプルプルっとロッドが揺れた。
すかさず合わせを入れると、その瞬間、ミノーが宙を飛んだ。
こちらに向かって飛んできたと思ったら、今度は頭上の木の枝にひっかかった。
見るとミノーをくわえた小イワナが宙吊りになっている。
必死に暴れ、やがてポトリと地べたに落ちた。

やれやれ、今日の獲物はこれ一尾。
きっとこの川にいた最後の生き残りに違いない。

今日のドラマのタイトルは「本谷川、絶滅寸前のイワナを追え」ってところか。
その後、ドラマの主人公は、足がもつれながらも長い長い林道をとぼとぼと帰って行った。