2005/10/13  良型が釣れた日
唐沢キャンプ場から2つ目の堰堤、深瀬に底石がいくつも並んでいる。
忍者のように上流に回り込み、そこから下流へ向かって思い切りキャストした。
ミノーは水流に逆らい、そして小刻みに震えながら上がってくる。
突然、ゴゴン!という衝撃を感じ、ラインがぐいぐい引かれた。
ピシリと合わせると、白い腹が川面を走り回る。
ここで余裕を見せ、魚をそっと引き寄せるのがベテランアングラーというものだ。
ところが、何年やっても慌ててしまう。
おまけに後方にあった大石に激しく尻をぶつけて、痛みに耐えながらのランディングとなってしまった。




堰堤の上から熊鈴が聞こえる。
アングラーが2名、川を下ってきたのだ。
フィッシングジャケットに身を包み、まるで雑誌から出てきたような二枚目釣り師。
「どうですか?」と声をかけられたが、僕は尻が痛いのだ。
とりあえず下を見てくれとばかりに足元を指差した。
「おぉ!」
彼は、後からくるもう一人のアングラーに向かって「やっぱりこのクラスばかりだなぁ!」と叫んだ。

このクラスばかりとはどういうことか。
僕にとっては大物、それにさっき「おぉ!」と驚いたではないか。
「どの辺まで行かれましたか?」と聞くと
「かなり上まで行ったよ」とのこと。
「川沿いに登山道があるんですよ」という僕のアドバイスに、
「知ってるよ」ときた。

そこから先をひたすら釣り上がるがコツリともこない。
彼らの濡れた足跡が河原の石に貼りついている。
しかし落胆はよくない。
先行者がいたって竿抜けポイントは必ず見つかる。

ある浅瀬で魚影が動いた。
上流の流れ込みに向かってキャストすると小ヤマメが釣れた。
次に中クラスが2尾、同じ淵から飛び出した。
普通、同じポイントに一度トレースしたら二度目に食ってくる可能性は低い。
かなりウブなヤマメたちだ。
4度目には20センチオーバーが釣れた。
昔の日本はどの川もこんな感じだったのだろう。
この国で一番最初にルアー釣りを始めた人間はさぞかし笑いが止まらなかったに違いない。
足跡だらけの唐沢川で、この流れ込みだけは楽園だった。


今日は特別、塩焼きサイズを2尾だけキープする。
帰路は川を通らず、登山道を下った。
中津川に出ると、初老の男性が声をかけてきた。
バックの中身を見せると目を細めて静かに言った。
「ほほぅ、良い型だ」
アングラーの挨拶はこうありたい。