2005/10/14  明日から禁漁なり
林道終点に到着、時計はすでに9時をまわっている。
禁漁日前日だというのに駐車している車はない。
「クマが出る」とか「ヒルに注意」の看板のことろから入渓する。

川には大きな石が積み重なり、その間をいくつもの落ち込みを作りながら水が流れて行く。
その落ち込み一つ一つを丹念に探る。
渓流ルアーとは、基本的にこの動作の連続だ。
中規模河川ならば、多少のミスキャストも許されるだろう。
しかし、小渓流では足場も悪く、木が生い茂り、クモの巣が立ちはだかり、大岩が邪魔をする。
もしもこのような状況の中で、10センチ程度のピンポイントにうまくキャストできるとしたら、渓流ルアー界のカリスマと呼ばれるに違いない。




しばらく釣り上がると深い落ち込みを見つけた。
一面に広がる白泡の下で何かが動いた。
這いつくばって確認すると、尺を超えるであろう巨大魚が悠々と泳いでいる。
ここでヤツを仕留めれば、シーズン最終日を華々しく飾れるはずだ。
ロッドを握る手にも力が入る。

ところがどっこい、1投目は真横に飛んだ。
気を取り直して投げた2投目は落ち込みのかなり手前、しかもうまく泳がない。
どうやら着水と同時にフックがラインに絡んでしまったようだ。
次こそはと意気込んで投げたら、ミノーが木の枝に掛かってしまった。
指でつまんで外そうとしたら、ミノーのすぐ横に芋虫がいる。
もう最悪だ。
その後何回キャストしても、僕のミノーに巨大魚が食いつくことなどなかったのである。

二の足林道手前にある堰、プールの右サイドにミノーを落とす。
すると黒い影が、着水地点とは反対側にサッと逃げた。
そこで今度は、魚の逃げた方向、つまり向かって左サイドにキャストしてみる。
ブルブルっと来た!
ミノーを避けた魚なので、まさか食ってくるとは思わなかった。
右手から伝わる魚信の感触は身体がとろけるくらい気持ちいい。
浅瀬に寄せると、丸々と太ったヤマメであった。
おそらく卵を抱えているのだろう。


本日釣れたのはたったの1尾。
魚影を何度か確認したものの、数々のミスキャストによりヒットまでは至らなかった。
一度ルアーをトレースした場所に、再度キャストしても追ってはこない。
これが小渓流の現実だ。
未だに僕はその常識から外れた例外を釣っているにすぎないのである。

非常に繊細な釣りに疲れ、トボトボと林道を下る。
車まで戻って足元を見ると、シューズにヒルが複数張り付いていた。
もしやと思ってウエアを脱ぐと、背中にも数匹這っている。
さらにシャツにも一匹。
誰もいない駐車スペースには、泣きそうな顔をして背中や脇の下を確認する裸の僕がいた。




このような場所でチャンスは一度きりだ


フックは折れ、目も取れ、ボロボロになっても活躍してくれた