2006/04/15  イワナに慰められる
上流まで釣り歩いても魚影を確認できなければ「この川に魚はいない」と判断してしまう。
何時間も釣り歩いて何の反応もないのだからそう考えるのは無理もないことだ。
しかし、先日テンカラ倶楽部の方々と同行した日に目から鱗が落ちる思いをした。
魚の気配のない枯れた河川で、彼らは小さいながらも確実に釣果をあげていた。
「ここでヤマメが3尾出ましたよ」と言われた場所は小さく浅い滝だった。
同じ場所にルアーを泳がせても何の反応もない。
しかしそこに数尾のヤマメが生息していることを彼らの疑似餌が証明したのである。
「魚がいない」などと判断する根拠は何もない。
それはルアーに、そして釣り人のテクニックに反応してくれる魚がいないだけのことだ。





今日のtaki_minnow は蛍光色だ。
塩水のほとりに立ち、遠くにキャストしてみる。
ロッドを立ててリールを巻くと、ウネウネと身体をくねらせる様子がよく見える。
しかし、自然界には存在しないド派手色のミノーを「食おう」とするヤツはまだ現れない。

この川で魚を見たのは塩水橋から1キロほど歩いた入渓地点のみ、着水したミノーに良型が一瞬飛び出して、すぐに岩陰に隠れてしまった。
ルアーに触れてさえいなければ、次のキャストで食ってくる可能性もある。
緊張してロボットのように硬くなった腕で、何度もキャストを繰り返したがそいつは二度と現れなかった。




水温、気温、共に低く、桜は未だ散らずに山肌に飾られている。
時折、花びらが舞い落ちる中をさらに釣り上がる。
先行者もなく水量も申し分ない。
それでもまったく釣れない本流をあきらめて支流に入ってみた。
一畳分ほどの落ち込みを見つけては丁寧にリトリーブしてゆく。
「こんにちは!」
見上げると丹沢山へ続く登山道からハイカーが手を振っている。
「釣れますか!」と叫ぶので、片手をふって「ダメだ」と答えた。
すると彼は大きな声で「ここに魚はいませんよー!」と言う。
その時点でやる気は失せ、この場所で終了することに決めた。
「やっぱりこの水系には魚なんていないんだ」




ロッドディップにミノーをぶら下げたまま、林道を足早に下る。
今朝方、何度もキャストした堰堤の溜まりには落ち葉がたくさん浮かんでいる。
「もう一度投げてみるか」
対岸からふわっと弧を描くようにキャスト、落ち葉の手前にポトリと落ちた。
竿先を軽く引いてミノーを躍らせてからリトリーブ、するとプルプルプル!
元気なイワナが食いついてきた。
いったいこの川には何尾の魚がいるのか、そしてなぜ姿を見せてくれないのか。
このイワナが話せたら聞いてみたいことが山ほどある。
口からフックを外し、溜まりに戻してやった。
イワナが深場に向う途中、こちらを振り返るような素振りを見せた。
なんだか小さな命に慰められたような、そんな気がする。