2006/04/22  アングラーのセンス
朝7時、唐沢川出会い付近に2台の車がとまっていた。
川原に降りてみると、濡れた足跡は見当たらない。
おそらく先行者がいたとしても数時間前のことだろう。

いったい渓流魚というのは、場荒れした後にどれだけ待てば警戒心が解けるのか。
以前、暑い時期にイワナが数尾泳いでいるのを見つけたことがある。
そこは深い淵で、僕はそーっと川下から近づいた。
すると「ドボ〜ン!」
一瞬何が起きたのか解からないでいると、すぐに淵の真ん中から少年が顔を出した。
どうやら魚にばかり気を取られ、僕は飛び込む少年に気づかなかったようだ。
その子は次々と淵に飛び込みながら、下流へと去ってしまった。
その後しばらくその場所にいると、20分ほどしてから魚は再び泳ぎだしたのである。
それを考えると1時間もあれば、釣り場はもとに戻るのではないか。




キャンプ場前から二つ目の滝、その手前まではノーフィッシュだった。
特にキャンプ場周辺の渓相はすばらしいのだがさっぱり釣れない。
例によって僕は勝手に「魚のいない場所」と断定した。

二つ目の滝の底から小さなヤマメが飛びついてきた。
唐沢川のヤマメは全体的に茶系色だが、このチビはすごく綺麗なブルーだ。
「まだ若いんだな」
すぐにフックを外して逃がしてやる。
その後、瀬の小さな落ち込みひとつひとつを攻めて行くが、何の反応もなく次の堰堤を向えた。





堰堤プールの右サイドには茶色い岩が石畳のように並んでいる。
その石畳エリアの中央には流木が覆っており、そこから魚影が見え隠れしている。
プールの中央から石畳に向ってキャストすると流木の下から2尾ほど飛び出してきた。
しかし、ミノーが茶色い石畳エリアを越えて砂底エリアに移動するやいなや引き返してしまう。
彼らは保護色をわかっていて、茶色エリアから出てしまうと自分の姿が丸見えであることを知っているのだ。

しかし僕は魚よりもIQが高い。
茶色エリアの広い部分をカバーできるように右サイドにそっと歩み寄り、最先端に向ってキャストした。
茶色い石畳の上をtaki_minnow が踊りながら移動してゆく。
決してエリアからは出ないように引いてくる。
「ヒット!」
「でかい、でかい!」
石畳エリアに水しぶきが飛ぶ、魚は水面から顔を出して激しく首を振った。
ぐいぐいと何度も合わせを入れ、フッキングを確かなものにした・・・・はずだった。
我に返ると何事もなかったように川は流れ、どこかでピーっと鹿が鳴いていた。
僕も泣きたい。




その後ずいぶん上まで釣り上がったが、小ぶりのヤマメが2尾釣れただけだった。
登山道を下って帰る途中で石畳エリアに寄ってみたが、数時間経過しているにもかかわらず、1尾の魚影も見ることはなかった。
さらに僕が「魚はいない」と断定したキャンプ場前にキャストしてみると、突然ロッドが絞り込まれた。
しかしお粗末なことにそれを根掛りだと思ってしまい、合わせを入れることもなく逆にロッドを送り込んでしまったのである。
プツンと軽くなり黒い影が去っていく、悲しかった。

何時間たっても石畳エリアの場荒れは回復せず、「ここにはいない」と断定したところで大物を取り逃がした。
アングラーのセンス、それを磨くためには少しばかり時間がかかりそうだ。