2006/06/10  40センチのイワナは軽いウソ

車を両国橋付近のキャンプ場に止めて受付へあいさつに行く。
「こんにちは」 と声をかけると、管理人が驚いた顔をして出てきた。
「よぉ!takiさん久しぶり、元気かよ?」
「今日はキャンプじゃなくて釣りに来たんだよ」と言うと、
「ならよー、向こうの溜まりをやってみなー、イワナの46センチを釣った人がな、魚がまだ残ってるって言ってたぜ」



梅雨の晴れ間、川面には生温い湿った風が吹く。
管理人のアドバイスどおりに、下流の溜まりに行ってみる。
大きくえぐれた淵には特大のプールが出来ており、遠くで魚がライズしている。
渾身の力をふりしぼり、その場所へフルキャストした。
ところが、ひらひらと舞うミノーは風を受けて失速、プールの中程にポトリと落ちた。
小沢用に作られたtaki-minnowは、軽すぎて向こうの岸まで届かない。
せっかくの一級ポイントで釣りをしているのに、これでは釣果も半減してしまう。

そこで岸からのキャスティングをあきらめて、川の中に立ち込みながらキャストした。
対岸には二つの岩があり、その間をトレースすると一度に数尾が追ってくる。
しかし、追っては来るものの口を使わない。
放流されたばかりの無数の鮎が苔を食み、その体側が乱反射している。
それを渓魚が放っておくわけがない。
きっとミノーにも反応するはずだ。




同じ場所に立ち込んだまま、放射状にキャストしてゆく。
岩の窪みから魚が複数、興味深げに追ってきた。
一尾がミノーの前方に回りこむ。
すると突然ロッドが重くなり、ディップが不規則に震えた。
大きなヘッドが川面を切る。
ドラグが鳴った。
相手は必死に暴れているが、今のところ外れる気配を感じない。
「やった!」
「やっと、やった!」
ロッドを引くたびに声が出る。
本当にうれしかった。
今日まで数々のバラシに会い、苦い涙を飲んできたのだ。
その労いの思いを込めてグリップをグイグイ引く。
それがいけなかった。
「わっ!」
ふっと軽くなり、辺りは何も無かったように静かになる。
チチチチチと鳥が鳴く、しばらく立てなかった・・・。
ミノーを確認すると自作フックが折れていた。





その後、近くの淵で良型のヤマメがヒット!
普段、通っている川では拝めないような太い魚体だ。

キャンプ場に戻ると、受付から管理人が飛び出してきた。
「takiさん、どうだったよ」と言うので、一本指を立てて答える。
彼は、それを見て気の毒そうな顔で「あ〜んだよぉ」と言った。
そこで、「いや、40センチは本当にいたよ!それより小さいのは全部逃がしたよ」とごまかした。
するとニッコリ笑って「そーかぁ!またおいで、元気でな!」と満足そうに笑ってくれた。
ウソでみんなが幸せになることも、たまにはある。