2006/07/01  アングラーの浮気心
富士のM川には様々な顔がある。
下流はのんびりとした里川の雰囲気があり、コンクリートの隙間から良型が顔を出す。
大きなプールでは銀化した魚も釣れるらしい。
また、中流域は公園になっている。
両岸には整備された芝が広がり、ヒットの瞬間をアベックが見ていたりするので面白い。
釣れてくるのはサビ色のアマゴだ。
とても美しい魚体とは言えないが、天然魚らしい力強い引きを堪能できる。

さらに上流に進むと渓相は一変する。
まるで仙人が住んでいるかのような、神秘的かつ幻想的な森を流れ、そこに住むアマゴは白っぽくて清らかだ。




今夜はYellow_Houseに泊まることになっている。
自分の肴くらいは自分で釣りたい。
ところが未だに釣果はゼロ、ミノーの動きや僕のキャスティングに問題はない。
夕方までには、ミノーに反応する魚にめぐり合えるだろう。

石の隙間をひとつずつ探りながら進むと、広く開けた場所に出た。
はるか前方の大岩の上に人影がある。
よく見ると同行者の日暮氏ではないか。
彼はのんびりとビール片手に、「どうです?」と聞いてきた。
ずいぶん余裕ではないか!
「ゼロです」と答えると、「えー、そうですか?」
「この辺は魚だらけですよ」
彼が指さすポイントは水溜りのような浅い場所だった。
さっそくTaki_minnowを振り込み、できるだけゆっくりと通してみるが何事も起きない。
テンカラとの釣果の違いには、毎度ながら驚かされる。




薄暗い森の沢に、もやがかかる。
激しい流れは岩に砕け、やがて溜まりへと滑り落ちる。
水流が細かい泡となって浮かび上がる様は、純白のビーズを散りばめたように美しい。
泡の中心にミノーを投げると、深底から魚が飛び出しフックに絡みついた。
カタカタと音を鳴らし必死に抵抗を続けるアマゴ、体長20センチはあるだろう。
大物を取り込むのも名誉あることだが、このクラスの魚を相手に遊ぶのも優劣なく楽しい。

その後は公園下で良型のヤマメを釣り上げ、僕の釣果は2尾となった。
十分満足したので、同行者の様子を見に行く。
夕暮れの堰堤ではYellow氏がロッドを振っていた。
数回に一度の割合でチビアマゴが釣れてくる。
時折、竿をグンとしならせるものもある。


「テンカラってよく釣れるんだなー」
一度やってみたくなってきた。
ところがルアーロッドの先に揺れるtaki_minnowがジロッとこちらを見ている。
その日の夜、僕はしたたかに酔い、ミノーイングとはいかにすばらしい釣法であるかをテンカラ師に対して一晩中説いた。
やがて、Yellow氏は言う。
「ルアーやってみようかな」