2007/04/08  ヒーローに成れず・・

谷太郎川へは初夏がくる前に行きたい。
それは、ヤマビルを気にせずにのんびりと釣りが楽しめるからだ。
あと数週間もするとヤツらは活動を始める。
忍者のように忍び寄り、音もなくウェーダーを這い上がって首筋の血を吸う。
なんと卑怯な攻め方だ。
盛期になるといちいち足元を確認しながらキャストしなければならない。
だからこの川の釣りは大変疲れるのだ。



マス釣場より数キロ下流から入渓してみた。
水の色はクリア、しかし量は少なく浸した手が痺れるくらいに冷たい。
Taki_Minnowをキャストするとコツンとした当たり、ロッドディップが一瞬引かれたがすぐに戻った。
「食いが浅いな・・」

管理釣り場直下のポイント、落ち込みを狙ったつもりが大きくスライスしてしまった。
ミスキャストである。
浅瀬に落ちたミノーを回収しようと早巻きしたら、なんと魚が追って来るではないか。
Taki_Minnowを早巻きすると真っ直ぐには泳がず、左右に移動しながら戻ってくる。
しかし魚はミノーと接着されているようにピタリと寄り添うように追ってくる。
一瞬リトリーブを止め、すぐにトゥイッチ!
ところがコツンと当たっただけ、「食いが浅い・・」




魚は出てくれるのだが、すべてバラしてしまう。

中流域ではお弁当を食べている家族と出会った。
小さな子供たちが楽しそうに笑っている。
「こんにちは!」
彼らの前を通り過ぎ、しばらく歩くと大きな淵に出た。
ここで信頼の置けるフックと交換する。
対岸に向って思い切りキャスト、そのままゆっくりとリトリーブ。
「来た来た!」
水面が割れ、白いしぶきがこちらに向ってくる。
「逃げるなよ、逃げるな」
硬くなった両腕で必死にリールを巻き足元に引き寄せた。



「撮影が終わったらあの子供たちに見せてあげよう」
岸に横たわる魚を写真に収め、すばやく水中へ戻してもう一度ファインダーを覗く。
するとフッ、一瞬にして逃げてしまった。
僕は「わーい、お魚だ、おじちゃんすごい」と叫ぶ子供たちの声を想像していただけに落胆の色は隠せない。

「もう一尾・・」
そう思って何度もロッドを振るがすべて不発に終わる。
しばらくして水枯れの川原を引き返すと、すでに子供たちはいなかった。
しょうがない、ヒーローは自分の中にある。