2007/07/04  虫を待つイワナ
気温23度、今朝は小雨舞う梅雨寒の朝となった。

少し早めに到着して準備をしていると、いつものセダンがやって来た。
「おはようございます」
彼はウェーダーを履いたまま運転席から降りて来る。
すぐにトランクを開けると、ロッドを取り出して準備完了の様子だ。
彼にとって釣仕度に必要な時間は約1分だと思われる。

以前、ウェーダー姿で運転してきた彼に「自宅からその格好で来るのですか」と聞いたことがある。
「はい、コンビニへもこのまま入りますよ」
それは清潔感ある紳士的な風貌のTABOさんだからこそできる業だろう。



普段、ソロで活動している僕にとって久しぶりの同行者、ロッドを持つ手よりも口を動かす方が多い。
キャスト数はおのずと減り、それはダイレクトに釣果へとつながる。
しかし釣れなくても楽しい。
そんな風に思えてしまう余裕ある自分を久しぶりに見つけた。





大洞キャンプ場跡地の管理棟前でTABOさんが良型のヤマメを釣った。
ヒットルアーはピンクのTaki_Minnow、深い淵際にキャストした後すぐに食ってきたらしい。
「お見事!良い型がでましたね」と言いつつも羨ましさが込み上げてくる。
僕はこのような良型を最近は見ていないのだ。
「どうぞ、先行してください。次は・・・」と彼が言う。

僕はさっきまでの余裕もどこへやら、いいなぁ、TABOさん釣れていいなぁ・・・。
瀬、淵、落ち込みへ黙々と投げてゆく。
複数の新しい足跡と払われたクモの巣が、この数日間に入った釣り人の数を推測させる




キャンプ場からいくつかの淵を過ぎて広い場所に出た。

瀬の左側には淵が続いており、さらに奥の暗がりには水溜りができている。
例え釣り人が気づいてもスキップしてしまうようなチープな場所だ。
横には切り立った崖があり、真上にはブナの葉が生い茂っている。
そこから落ちる昆虫を、崖の際でじっと待つ魚がいるかも知れない。

少しテンプラぎみにキャスト、ミノーは宙を舞い水溜りの真上からポトリと落ちた。
すぐに煽るとグググッ!
ディップが勢いよく持っていかれる。
「やった!」
良型が暴れる水しぶき、久しぶりの快感だ。
手に取るとデップリとした魚体、腹を握るとたくさんの昆虫が口の中からポロポロ落ちた。




自分で想定したシチュエーション、その筋書き通りに事が運び良型が掛かる。
釣り人にとってこれ以上の醍醐味はないだろう。
TABO氏も同様、十分に満足できた様子だ。

いつしか小雨は本降りへ、「帰りましょうか?」
どちらからとも無く声をかける。
長々とした別れの挨拶など無用だ。
お互いの車に乗り込むと片手を上げて軽く合図、そのままそれぞれの家路へついたのである。