2007/07/14  何よりも釣り?!
キャンプ場前の流れ込みには、デンと居座る大岩がある。
その下にえぐれた窪みができており、良型の渓魚が潜んでいるに違いない。
しかしポイントが狭い上に流れが速く、岩肌ギリギリにキャストしたとしても一瞬にして流されてしまうだろう。
おそらく重めのスプーンなどを沈めれば食ってくるのだろうが、僕にはTaki_Minnowしかない。
ラインスラッグを出さないように水面と平行にミノーを飛ばす。
フェザーリングで姿勢を整え、着水と同時にリトリーブ。
ラインが流されぬようにロッドを立て、ディップを跳ね上げ細かい煽りを入れる。
来た来た!
重たい・・・。
右手に不規則なリズムを感じる。
僕もぐいぐいロッドを引く、それがいけなかった。
ふっと軽くなり、ミノーは水面から勢いよく飛び出した。



渓流魚の堅い口、どんなフックを試してみても完璧と言えるものはなかった。
一度でもフッキングしてしまえばサスペンションが効いてくれるのだが、しっかり刺さるか否かは偶然に頼らざるを得ない。
ロッド、ライン、フック、何度も試行錯誤を重ねたが、最終的には自身のテクニックを磨くしかないようだ。
ドラグと腕の力加減、釣果の薄い東丹沢でこれをマスターするには何年かかるのだろう。




雨の中、背中をまるめて釣り歩く。
キャスティングの度に小さな魚たちが反応してくれる。
散るもの、岩陰から顔を出すもの、そして追ってくるもの。
しかし、食ってくる魚は極一部だ。
「魚影があるのにちっとも釣れない・・・」
その答えはすぐに出た。
僕のミノーにヒットしてきたアブラハヤ、どうやらこの川を泳ぎまわっているのは渓流魚だけではないらしい。




それでも昼を過ぎた頃からポツポツとヤマメが釣れ始め、魚の反応も少しずつ上がってきた。
しかし、雨も強さを増す。
堰堤越えのために崖を登ると、水をたっぷりと含んだ土に足がめり込む。
地盤が緩んでおり、落石の可能性もあるだろう。
これ以上は危険と判断し、そのまま撤退することにした。




林道を歩いていると軽自動車が止まり、運転席の男が「K沢をやられたんですか?」と聞いてきた。
「ヤマメ釣れましたか?」と聞かれたので、「うん」と答える。
「僕も今からやろうと思っているんだけど・・」
しかしすでに午後3時だ。
「朝よりもだいぶ増水して、少し濁りが入ってきていますよ」とアドバイスする。
何釣りだと聞くとルアーだと言う。
もう僕が入ってしまったよと言うと、「じゃぁ、もっと上流からK沢に入ります」と大急ぎでアクセルを踏んで行った。
明日の予報は台風上陸だ。
この時間から準備をしてK沢上流へ入るにはかなりの時間がかかる。
さらに帰路は夕闇の林道を、雨に打たれながら延々と歩くことになるだろう。
忙しい毎日の中でやっと作った貴重な時間、彼はつかの間の渓流ルアーに命を賭けて楽しもうとしている。
そこまで覚悟を決めているのなら立派だ。
熟練者のようだし、おそらくは機転を利かせて林道直下の本流域で数時間の釣行を楽しんで帰るだろう。
命を磨く価値ある釣りに、命を尽くす価値はない。
くれぐれもご用心!