2008/05/28  大切にしたい仲間たち

薄暗い渓を一人で行くのが僕のスタイルだ。
賢いヤマメや愛らしいイワナとのスッタモンダがたまらない。
キャスティングの精度を追求したり、トゥイッチング技術を磨くことはほとんどない。
それでも時として狭いポイントにミノーが入る。
そんな時はニカッと笑い、さらに魚のチェイスがあれば最高なのだ。
ましてバイトなどあった日には興奮してアゴが外れそうになる。
他のアングラーのスタイルや技術にも興味がないし、誰がどう釣ろうと勝手だと思っている。



僕の親友、TABO氏と琉空氏。
彼らといるとソロの時と同じように楽だ。
それぞれ好きなように釣り、必要なときだけ集まって笑う。
同行者が釣れても嫉妬することはない。
ミスキャストを多発しても誰も気にしていないから言い訳の必要もない。
少年と大人を切り替える精神的スイッチ、そのタイミングが彼らと僕は合致している。




グググッ!
彼らの目の前で尺イワナを掛けた。
前回から使い始めたネットの扱いに僕は慣れていない。
ロッドを高く上げ、腰の高さに構えたネットに宙吊り岩魚を収めようとする。
しかし空中で暴れるデカイ岩魚は手強く、ランディングにえらく苦労した。
僕の大捕り物を見て彼らは腹を抱える。
尺イワナを釣って笑われる男はなかなかいない。
指をさされ、「腰が引けて変な格好でした」と言われて嬉しく思う。
今日はなんて気楽な釣行なんだろう。




急な崖をよじ登り、滝を巻いた場所で昼食を取る。
適当に石を並べ、炭を放り込み、串刺しの肉を焼く。
バックからビールを取り出すと「あぁ、ビール、ビール!」
手渡すやいなや「プシュッ、グビグビ・・」節操の無い愛すべきヤツらが喉を鳴らす。
山梨県の奥深い渓、しっかりと根付いた木々が山の土を掴んで離さない。
鉄分が多いのだろう、錆の入った石が両岸に転がる。
その間を縫うように流れる小さな支流で岩魚が釣れた。
大きくえぐれた浅い淵では琉空氏が良型を引き出している。
同じ場所にミノーを投げるとウヨウヨと数尾まとめて追ってきた。




 釣行を追え、始終ゲラゲラ笑いながら林道を下ると、すぐに駐車場に着いてしまった。
そこには釣行を終えたばかりの爺さんがいて、「どうだった?」と聞いてきた。
彼は去年の台風以来釣れなくなったと言う。
「それでも今年は200は釣ったがな」
「そ、そんなに・・」とTABO氏。
「おらぁ、毎日来てるからな、去年は尺上だけでも300は釣った」
何百釣ったら満足できますか、などと野暮なことは聞かない。
爺さんを見ていて思う。
僕の皮膚が枯れ、足腰がゆがんで倒れそうになっても、その霞んだ目で死ぬまで渓魚を追いかけられるだろうか。
まさか無理だね。
だけど気の置けない仲間がいるから、もしかするとそれは可能な事かも知れない。