2009/03/01  こころ待ちの日
「あぁっ!」
突然、ロッドの引きが重くなり一瞬でラインが切れた。
普段から大きな魚と無縁の僕は、ドラグの調整などいい加減である。
「うっかりした・・。」
どんなに高価な道具を使っていても、アングラーの気のそぞろは釣果に現れる。




解禁日、細々と流れる表丹沢の渓を3人で釣り上がる。
綺麗なヤマメと遊びながら交互に進めば、遥か前方に大堰堤が見えてきた。
その横を這い上がり、巨大な壁の裏側を見て息を呑む。
そこには小渓流とは思えないほどのプールが広がっていた。
「す、すごい・・」
「こりゃ、かなり深いよ」
「モンスター級がいるかもね」

そっと水際に近づき、周囲を見回す。
一帯に広がる倒木や突き出たブッシュが障害となり、キャスティングは非常に困難だ。
Karma氏が躊躇するのも無理は無い。
しかし彼の目前を僕の投げたミノーが飛んでゆく。
そして立ちはだかる無数の小枝をうまくかわし見事に着水させた。
「おぉ・・」とKarma氏。
それは僕のキャスティング技術に対する尊敬と驚きの声に違いない。
と、そこまでは良かった・・。
その後ドラグの締めすぎで文頭のような惨めな結果に終わるのだ。

それにしても30センチや40センチ級なら多少の魚信は感じられただろう。
ブルブルとも言わずに突然ゴン!
せめて超重量級が引っ手繰って行ったのだと考えれば、ロストミノーも浮かばれる。
「絶対また来ましょうね」
「太いラインを巻いて、ザイルも装備しよう」



「この辺は魚だらけだよ!」
などと中流域を粘るYellow氏を口説き落とし、午後からは下流へ降りてみた。
畑の中を行く。
古い石垣に張り付くようにして川原に降りれば、好ポイントが多数点在していた。
しかし、ハヤの姿さえ見当たらない。
「工事の影響だな」
Yellow氏の話では、工事を行う際、濁りを極力抑える必要がある。
そこで処理を行ってから下流に流すのだが、どうしても水質悪化は否めないとのこと。



川沿いにはいくつかの行楽施設があり、釣り禁止の場所もある。
その敷地内を忍び足でやり過ごし、境界線を越えてからは堂々と釣る、
というのを繰り返した。
施設を出てすぐ上にある滝の前に立つ。
森を照らす穏やかな日差し。
落ち込みの水面は揺れ、幾方にも光の乱反射を起こしている。
そのイルミネーションの輝きから良型ヤマメを引き出した。
続いてKarma氏も同じ場所でヒット!
「やったね!」
一世代違う彼と、兄弟のように浮かれ騒げる自分が愉快である。



Yellow氏はひどい花粉症のため、施設内のカフェで休んでいた。
彼はノンアルコールビールを飲みながらマッタリとしている。
僕も同じものを頼む。
「Karma君も何かオーダーしなさい」と言うと、「はい!」
ほどなくして彼の前にはボリュームたっぷりのカツカレーが運ばれてきた。
一日中、沢を歩けばハラペコだ。
「うまそう〜、僕も頼めばよかった・・・」

今回も3世代釣行は成功に終わった。
渓流ルアーにキャリアや技術、そして年齢の差はまったく関係ない。
楽しんだ者が一番えらいのだ。
今年も大いに笑い、叫び、釣り、そして少しだけ食ただく。
楽しいゲームの開幕だ