2009/10/14  丹沢ラスト釣行 '2009
駐車場に車を止め、自転車で林道を行く。
しばらく進むと川は平坦な流れから渓流らしい起伏ある情景に変わった。
入渓ポイントに到着すると一台のバイクが止まっている。
先行者がいるのでは仕方が無い、そのまま右に折れ小さな枝沢に入ってみた。



数日前に大雨が降ったにもかかわらず水量は少ない。
淵も浅く、魚はいないのではないか。
鬱蒼とした暗い森、熊除けのために高々と笛を吹く。
「ぴー!」
すると遠くの鹿が反応して甲高い声を発した。
僕はそれに応えるように再度吹く。 
「ぴー!」
しばらく続けていると、対岸の崖に鹿の親子が現れた。
「驚いたな、鹿笛というのは本当に鹿を呼ぶんだ・・・」
「ぴっ、ぴっ」
彼らが短く鳴いたので僕も真似をして笛を吹く。
母鹿はこちらをジッと見つめている。
彼女の大きな瞳に包まれるような、なんだか妙な気持ちになった。
痺れを切らした小鹿が「そんな男は放っておいて早く行こう」と母親をつつく。
僕は彼らを刺激しないように動かず、目だけをキョロキョロさせている。
しばらくして2頭は振り返りつつも山に向かって歩き出し、やがて僕も渓を降りたのである。





合流点の空き地に戻ると、もう先行者のバイクは止まっていなかった。
林道もトレイルロードも存在しない渓、ここから先をたった一人で自由にやれる。
たっぷりとした淵の前に立つだけで、すでに釣れてしまったような気持ちになった。
延々と続く落ち込みへ次々とキャスト。
しかし、どうしたことか全然釣れず、ピクリとも来ない。
着水後に激しいトゥイッチを入れ、水流と同じ速度で巻いてくる。
でもダメ。


大岩の狭間からキャスト。
taki_minnowは狙い通りのポイントに落ち、それをすばやく巻く。
しかし、両岩の壁にディップが邪魔され上手くリトリーブできない。
戸惑っているうちにミノーは水中深く落ちてゆく。
慌てて回収しようと無理やりグリップを引いた。
すると弛んだラインの遥か遠くで、銀色の物体が水面を転がるように跳ねている。
「魚だ、ミノーに魚が付いてる」
夢中で巻く。
あ〜っバレた。
がっくりだ。
だが待てよ。
フォールさせれば良かったのか!
もしかしたら立ち上げが早すぎたのかも知れない。
そこで次の落ち込みでは、すぐには巻かずに時間を置いてみた。
ミノーが深く沈んだところでロッドを煽る。
するとグググッ!
釣れた!読み通りだ!



渓流魚にも適正なタナがあり、その位置で食ってきたということか。
それともキビキビ泳ぐミノーよりもヒラヒラするものに興味があったのか。
どちらにしても楽しければそれで良かった。
2009年丹沢釣行最終日。
今年は個人的にも特別な年、できるだけ良い思い出を残したい年なのだ。
上流に向かって思い切りキャスト、そしてしばらく待つ。
そのワンパターンで連続釣果を得ることができた。




汗ばむ体にヒンヤリとした秋風が心地よい。
大きな滝の横には鎖場があり、それを慎重に登る。
トップのわずか手前に滑りやすい岩があった。
それを越えれば次のステージに上がれる。
しかし僕は迷うことなくその場を断念した。
「危険な場所はもうやめだ」
来シーズンは一世代上の僕が、優しい渓を選んで釣り歩くだろう。
山釣りをやるには体力はもちろん勇気も必要だ。
しかし何よりも「無理はしない」、それこそが長く続ける秘訣だと思う。


ヤマメ水中ビデオ(注意: 音が出ます)