2010/04/03  濁り水に舞うヤマメ
水しぶきを浴びながら、這うようにして滝の上に出た。
残雪を撫でて吹く風が冷んやりとしている。
とても寒いので積極的に動く。
そして滝にも登る。
滝に登るから衣服は濡れ、衣服が濡れるから体が冷える。
冷えた体を温めるためにはまた滝に登らなければならない。
気がつけば魚影を見ることもなく山奥まで来てしまった。



今までに何本もの支流を釣り歩いてきた。
しかし中津川水系が僕に微笑むことは滅多にない。
「ここもダメだった・・」
服の泥を落としながら林道を行く。
水を吸ったフェルトは重く、靴底を擦り付けるようにして歩いた。
林道脇から水の流れる音がする。
ガードレールを跨いで崖をすべり下り、藪の中を覗くと小さな沢がある。
細い流れ、浅い底、水は濁っていてお世辞にも綺麗とは言えない。
無造作に立ち込むとヌメッとしたヘドロに足を取られた。
「気持ち悪い・・」
キャストしてみると、意外にも良型が追ってくるではないか。
バシャバシャ!
川幅は2メートルにも満たない。
水深は10cmほど。
そんな流れにイワナが住んでいたのである。




その後も魚たちは飽きることなく姿を見せてくれた。
左から小さな固体、そして右からは良型が追ってくる。
そこでミノーを右へ移動させ「大きい方を選んで釣る」というのをやった。
鮮やかなオレンジ色のヒレはこの沢特有のヤマメだろう。
厳しい環境のせいか痩せている。
流れに戻すと、僕の掌を元気にすり抜けていった。




川底のヘドロはどこから来るのだろう?
藪を掻き分け夕暮れの沢を登ってみた。
水流はより細くなり、おそらく水深は数センチ。
そんな頼りない流れの中でも、魚影が勢いよく走り去る。
彼らの生命力には驚かされるばかりだ。
突然視界が開け倒木だらけの広場に出ると、そこにはブルトーザーが止まっていた。
両サイドにはコンクリートの柱。
ひっそりとした山中で工事が行われていたのだ。




丹沢に降る雨が苔の隙間からしみ出し、細い流れはやがて本流へ注がれる。
日本は水の豊かな国だ。
しかし一方で世界最大の水輸入国でもある。
また、年間3千万トン近い穀物を輸入しているが、それを育てるために生産国は気の遠くなるほどの水を使用している。
地球上にはわずかな水をめぐって論争が起きていたり、節約しながら生きている民族も多い。
その豊富な天の恵みを他国に頼ることなく確保することにより、救われる国々があるとすれば河川事業は意味を持つ。
泥の上に黄色い腹を乗せて餌を待つイワナ。
オレンジのフリルで濁り水に舞うヤマメ。
逞しい彼らもこの環境下では長く生きられないかも知れない。
小さな河川であっても濁水対策は必要だ。
それはほんの少し視野を広げさえすれば簡単に解決できる事案だと思う。
泥の崖を上り林道脇の水場で好きなだけ湧き水を飲んだ。
「甘い・・」
この水がこの質のまま彼らの川に届く、その日が近いことを強く願っている。