進化を忘れた八方ヤマメ

両側が急な崖、まるで刃の上を歩いているようだ。
その切り立った尾根をソロリソロリ進むと遥か下に川が見えてきた。
丹沢に通って長いけどまだまだ知らない場所がたくさんあるんだなぁ。

「この辺から降りられそうですね」
「あ、あぁ(汗;)、降りなきゃ釣りにならないしね」
「ロープ使いましょう」
「た、、たのむ」

「うわぁ、一級ポイントばかりだ!」
少しの恐怖を我慢した後には雄大な渓という褒美が待っていた。

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キャストしてみると魚がすーっと追ってくる。
「あぁ・・!」
でも食わない。

ミノーのテールに鼻を近づけ、「こいつは餌では無いな」と確認したあとターンして行く。

ほとんどの魚が同じ行動を取る。
「ちくしょう」
たかが魚、しかし一筋糸では仕留められない。
だからこそ釣りは面白い。
餌を見れば単純に食いつく、そんな八方美人と付き合っていても意味がないのである。

それでもポツポツ釣り上がり、退渓の時間が迫っていた。
「もう5時か、このままだと暗い山道を戻ることになるね」
「でもまだ釣りしたいっすよね」
「うーん、どうしよう」
「じゃ、あと30分、5時半までやりましょう!」
「だな」

taki_minnowをぽ~んと放る。
天ぷらキャストの欠点はカニ、つまりベリーフックがスイベルに引っ掛かるトラブルのことを言う。
(遠く安土桃山時代に織田 信長が名づけたと言われている。 うそです)

着水と同時にその「カニ現象」が起きてしまった。
それを回収しようとハンドルを巻く、すると魚がわっと出てきた。
右から左から後ろから前から。
四方八方よりtaki_minnowめがけ戦国時代よろしく攻めてくる。
悲しいかな「カニミノー」は泳げない。
ずるずると川底を引きずりながら進む。
彼らはハンディキャップのある敵であっても容赦なく追撃してくる。
リールを巻くのを止めてみた。
当然「川底のシカバネ」と化すtaki_minnow、倒れたまま動かない。
しかしなんとヤマメ達はそのシカバネミノーにさえも集団で襲いかかってきたのである!
taki_minnowに噛み付く複数のヤマメたち。
倒れて動かない敵に対し寄ってたかってほぼ集団暴行状態。
(これ、ホントの話だよ)

二度目のキャストはきちんとフェザリングして着水、またもやワァ~ッと攻めてくるヤマメたち。
その中の一尾をゲット。

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僕はバラシばかりで釣れなかったけど、その場所には大物も多く生息していた。
どこに投げても複数で襲ってくる。

「いやぁ、パラダイスだね」
「すごいっすね!こいつらにはテリトリー意識なんて無いんですね」

そうだ、人間も農耕民族になって領土争いをするようになった。
それ以前は狩猟民族であり、集団でマンモスを襲い骨付き肉を食っていたのである。
おそらくここのヤマメは進化を忘れた超天然ヤマメなのかも知れない。
今度来たときは複数のミノーを一度に投げてみよう!
ルアーでヤマメを一度に5尾釣ったなんてアングラーはいるのだろうか、次回はそれをやろう!

餌を見つければ単純に食いつく、そんな八方美人が僕は大好きだ。